「天道是か非か」
○中国の故事に、「天道是か非か」があります。
司馬遷(しばせん)が著した『史記』「伯夷列伝」の最初に出てくる言葉です。
"このようなことがあって良いのか"と、天下にあまた生じる理不尽に対し、司馬遷は痛切な異議を唱えました。
○さて年金問題が紛糾しています。
行方不明の年金は、約5000万件と言われています。この解決に政府与党は、「最後の1人まで解明する」と、参議院選挙では公約していました。
この公約を受け、厚生労働大臣に就任した舛添氏は、「3月までに解決する」と果敢に申していました。
しかし、あまりにも多すぎました。庶民受けがある発言でしたが実現性が薄かったのです。
担当大臣としては、もう少し慎重でもよかったのでしょう。
"笛けども踊らない" 社会保険庁職員の課題もありました。結局公約は破棄されました。
しかも総理大臣までもが、「公約違反というほど大げさなものなのかどうか」と述べる始末です。
このような開き直りはなかなか出来ないものですが、さすが"大政治家"は違います。
○このような理不尽が横行しているなか、清水寺(京都市東山区)の「奥の院」では、恒例により、"今年1年を表す漢字1文字"が発表されました。
全国から投票を受けて決定するのですが、9万816通の応募があった中で、圧倒的多数が「偽」でした。
今年1年を示す1文字が、「偽」と言うことです。
大勢の報道陣に囲まれて、森清範清水寺貫主が直々に「偽」を揮毫していました。
その様子は、茶の間にも流れのですが、誠に鮮やかな筆致で、墨痕踊る大きな文字は、さすが高僧の精進がしのばれる名筆です。
とはいえ、書かれた文字が「偽」では、鮮やかな揮毫もなにやら胡散臭いものでした。
いかに名筆であっても、言葉はあまりにもすさんだものと言うべきでしょう。
○揮毫した森貫主もさすがに嘆かわしいと感じたようです。
「こういう字が選ばれるのは恥ずかしい。驚きどころか悲憤に堪えない」と述べています。
確かに「悲憤に堪えない」のですが、現実がそうであることもまた確かです。
なにしろ今年1年はあまりにも虚偽が満ちあふれました。
しかも名門と言われ、伝統も十分にある老舗企業で生じました。
「白い恋人」がありました。白の次は赤でした。伊勢神宮のお膝元では「赤福」以外にも次々と「偽」が露見しています。
「ミートホープ」は食肉を偽装しましたが、食の名門である「吉兆」も偽装でした。
○食ばかりではありません。高速道路工事では、その基盤になる建築資材の強度がごまかされていました。耐火試験の結果も虚偽でした。
いずれも「名門」企業で生じています。「名門」の伝統にあぐらをかき、傲慢になっていたとしか思えません。
これでは私達の"安心、安全"は危うくなるばかりです。
○このような「偽」の総仕上げが"年金"です。
私達は耳を澄まし、目をこらして、我が身を自ら守らねばなりません。
司馬遷が嘆いた「天道是か非か」は、2000年の時を経た今も、死語にはなっていないようです。
(黄色い風見鶏)
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