時事評論
No.41:「日本銀行総裁の講演」
(2007.5.16)

(2007.5:地元紙への掲載文転載しました)
○日本銀行は、我が国の中央銀行として金融政策の舵取りをしています。何よりも物価の番人として、経済の動きに目を光らせます。
その責任者は福井俊彦総裁です。氏の講演の招待状を戴きましたので、過日上京してきました。
東京は少々肌寒い日でしたが、講演会場はなかなかガードが堅く、さすがVIPの世界は大変なものです。

○講演の要旨は次の通りでした。
@我が国経済は緩やかな拡大を続けている。
A企業収益は高水準であり、設備投資は増加している。
B家計部門は一人あたり賃金が伸び悩んでいるが、雇用者が増加したので、全体では緩やかに増加している。 
C従って、企業が良く、家計は若干低いものの、全体では景気拡大である。
このような背景の中で、我が国経済は、さらに伸びる。成長を続ける、との見解でした。
誠に頼もしく、心強い講演でした。

○日銀総裁の話は、ホームページに掲載されますので、全文を読むことができます。何も会場へ駆けつけなくとも分かることですが、何事も見ると聞くではずいぶん違うものです。
 とりわけ、家計部門の説明(前述C)については、注意する必要があるでしょう。
中央銀行としての日銀は、国全体のことを考えています。だから一人あたりの賃金が落ちたとしても、失業者が働くようになり、全体の就業者が増加すればそれでよいのでしょう。
確かに単価が落ちても数が多ければ、全体は増加します。
でもそれは製品の話です。自分の給与が少なくなったのでは、たとえ日本国全体で給与所得が増加しても少しも嬉しくありません。
生きている労働者にとっては辛い話です。

○このような点が、"実感が無い"とされる理由のようです。
さらに福井総裁は昨今の景気回復について、その特長を「経済のグローバル化」と指摘しました。
グローバル市場での業績拡大が、企業の自信を高めています。このため、先行きに対する期待感が高まり、設備投資を進めているとのことです。
言葉を換えれば、グローバル市場と関係が薄い企業にとっては、景気回復が実感できないことでもあるのです。

○金利についてです。
総裁は、「今後とも政策金利水準の調整を行っていくことが必要」としながらも、「あらかじめスケジュールが決まっているものでは無い」としていました。
見解は当然のことですが、預金金利や借入金利に影響するわけですから、この動向はやはり気がかりです。
低金利があまりにも長く続けば、グローバルな影響は避けられません。その点をリチャード・クウ氏が質問していましたが、舵取りは難しいようです。
経済のモザイク模様は、いつの時代にもあることです。それだけに、金融政策、とりわけ政策金利の動向については明言できないのでしょう。

○マクロの世界と身近な世界は連動していながらも、異質な側面を有しています。
国民が等しく景気回復を実感することは難しいのだと、つくづく感じました。
(黄色い風見鶏)


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